「大島てる」という固有名詞に轢かれて読むと肩すかしを食うかもしれない。
なぜか?「大島てる」から連想されるような、"面白事故物件"やそれにまつわるエピソードがメインに据えられているわけではないからだ。
本書に書かれているのは、ひょんなことから大島てる氏と知り合い、事故物件に興味を持った著者が
「そもそも事故物件とはなんなのか?」を独自視点で綴ったルポタージュだ。
もちろん”事故物件”という言葉から期待されるような話ーー糞尿とゴキブリに塗れた状態でぶっ倒れて亡くなった生活保護受給者のエピソードや
事故物件入居者の奇妙な日常のレポートーーーもある。しかし、本書の醍醐味は著者の”ごく普通の視点”での解説だ。
事故物件に住んでみたら、死体があった場所が気になって仕方がないのではないか?不可思議な現象が起こったりしないだろうか?
霊の存在を感じたりするだろうか?孤独死の現場に立ち会ったらどんな気持ちになるだろうか?事故物件に関わる業者は、どのように物件と向き合っているのだろうか?
奇をてらわない普通の感覚での取材は、読み手との一体感を生む。(著者の菅野さんは友人なので、尚更なのだが・・・)
菅野さんの著作は、感覚や目線が冷静かつ普通なので、どれもこれも軽く読めて楽しい。オススメ。