子猫大量殺戮事件の想い出

 30年前の話。当時、実家では猫を飼っていた。去勢・避妊をしないという無責任な意識低い系の家だったので増え放題だったが、「これじゃあ、餌代もバカにならん」と全頭手術。それでも長期の放置の結果、20匹の多頭飼いになっていた。最後に生まれた子猫は5匹。「この子らも大人になったら、手術しないとなあ」などと親と話していた矢先の出来事であった。

 いつものように学校帰りにレンタルビデオ屋に寄り、ホラー映画ーー確か『新デモンズ』だったような気がするーーを借りて、フンフンと帰宅。鍵っ子の特権「親が帰るまで映画天国」を実行すべく、玄関の鍵を開ける。すると三和土で先の5匹の親猫がニャアニャアと泣いている。

「おー、どうした。ちっこいのに乳やんねの?」

 名前はシロポンだったかなあ。うん。シロポンだ。シロポンがニャアニャアないている。

「んだよ、俺はビデオを観るの。君は、子猫を構ってやりなさい」

 靴を脱ぎ、自分の部屋にカバンを置きに行こう廊下を歩いて行くと、二階につづく階段の前に子猫が一匹、横たわっている。

「なんだ、ほったらかして。まだ目も開いていないんだから。連れ出しちゃいかんだろ、ちゃんと子猫部屋の毛布箱に……」

 あれ、これ動いてない。っていうか、凄く平べったくなっている。これ死んでるじゃねぇか!

 「他の子は?」と大慌てで階段を駆け上がり、子猫部屋兼納戸になっている部屋に行くと、絨毯の上に1匹、毛布の中に2匹、積み上がったオモチャ箱の横に1匹、残り4匹の子猫が”平べったくなって”死んでいた。

 「な、なにこれ……。おめがやったの?それとも他の……」

 後から付いてきたシロポンに目をやるが、どう考えても猫の力ではこんなことは出来ない。だって”潰れている”んだから。噛み殺す事はできても、猫が子猫を圧死はさせられないだろう。内臓が出ているとか、何かを吐き出しているとか、そういう状態ではないのだが、とにかく”平べったくなって”死んでいた。

 親に「よく分からないけど、子猫が皆死んじゃった。っていうか殺されたっぽいんだけど、よくわかんない」と電話を入れ、ブルブル震えながら死体を回収し、袋に詰める。

「野良猫がやったんじゃないの?」

 仕事から帰ってきた母は言う。確かにウチには猫穴が開いているので、野良猫でも侵入可能ではあるが、あれは絶対に猫の仕業じゃない。じゃあ、一体何だ?と聞かれても困る。人がやったにしては荒っぽいし、人がやったとしても、俺が帰ってきたときは玄関に鍵は掛かっていたし、誰かが侵入したとすれば、内側から鍵をかけて二階から飛び降りるか……それか

 俺が帰ってきたとき、まだ家の中に居たかだ。

 未だ猫が何故死んだのは分からない。ただ時々、ふと思い出す話。思い返せば、ちゃんと動物病院に遺体を持ち込んで、原因を調べて貰えば良かった。

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