「それでね、そしたら今度は嫁をイビり始めたのよ!」
昨日、メトロ食堂街の追分だんご本舗でカキ氷を食っていたら。隣の席の老齢二人組の会話が聞こえてきた。
「前は姑にイビられてきたものだから、今度は自分がイビってやろうっていうわけ。ほーんっと浅ましい!」
「息子は何も言わないの?」
「そ!言わないの。ねー。母親がずっと婆ちゃんにイビられていたからってねー。怖いねぇ!浅ましいねぇ!」
「ヘェ〜」
「今度は自分がイビってやろうって!本当ね浅ましい浅ましい」
うーむ、ずっとループしている。老齢の会話は、子供の会話と同じでループしがちだ。
「おねえさん!ごめんね!お茶もらえる?」
会話を止めて、よく喋る若めの女性が店員を呼ぶ
「ここはいつまで営業してるの?」
「今月一杯ですね」
「あなたは、どうするの?本店の方に戻るわけ?」
そうそう、新宿メトロ食堂街は今月で終わりなのだ。
「はい、本店の方に戻ります」
「じゃあ、店舗は、伊勢丹の横の本店だけになるの?」
「ええ、そうなります」
「ここが戻ったら、お店も戻るのかしら?」
「ええ、ちょっとわからないですね。すべてつくり直すみたいなので……最低10年と伺っております」
「10年!?そお〜〜。」
お茶を入れ、店員さんが戻る。若めの女性が相方相手に会話を続ける。
「10年じゃあ、あなた無理ね。見られないわね。でも頑張んなさいよ!」
「93年も生きてるから、もう十分よ」
「そうねぇ!アッハハ!!」
カキ氷の味がよく分からなくなってきた。よく話す方が伝票を手に取り、会計に向かう。
「あのね、きしめんとお団子」
わ、割り勘!?家族じゃないのか。一体なんの知り合いなのだ。彼女たちは。93歳の方が遅れて、杖を手にヨロヨロと立ち上がる。ちょ、ちょちょちょ!手を貸してあげないと!いや、手を出すと5分くらいかかってしまう!すると氷が溶けてしまうではないか!!シャリシャリと食いながら考える。今書いていて思うのだが、早く手を貸してやれよ、俺。
考えている間に、レジ前にたどり着いた老女は会計を始めていた。椅子の下に小さなペットボトルが落ちているが目に入る。
「落としましたよ」
ペットボトルを拾い、彼女に渡す。
「あーー、ありがとう」
「あ、いえいえ」
奇妙なやりとりだ。カキ氷はもう溶けかけていた。一緒に頼んだ豆大福は餡子より豆が多いのでは?と思う食いごたえだった。